2025 2001 1945 1900 1800 1700 1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 700 645 500  0  -500 -1000 -3000 -5000 -8000    

日本物語。あるいは日本といふ物語。

  J-Story  ポストモダンの夢ノアト   





 



    前書
  美術界にかぎらず、ナニ界であろうと、現在世界は多様化された個性による自由世界へ向かおうとしているように見えながら、あらゆる「もの」「こと」、事象が細胞レベルで数値化され、スキャンされ、巨大データベースに登録されつつある。この世界の記号化による統合。果てのグローバル化という流れは、国際金融資本の通貨の例を持ち出すまでもなく、あらゆるジャンルで、何乗倍もの加速度で進行中であり、まさに、世界まるごと巨大容量の一台のサーバーさえ用意できれば、モノでもヒトでも一元管理化できる時代が、いや、もうすでに来てしまっている感ありありで、なんとスリリングなポストモダンな日常なんだろうかと思う今日このごろ。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
  ここに、この場で、みなさま方へ、かろうじて流行ことばで、ご挨拶できますことだけでも、まこと光栄に存じ上げる次第であります。とともに、簡単ではありますが、このご挨拶を、強いて分類すればメディアアートらしくもあり、ジブン的には、一般美術作品としての自覚にもとづいているつもりのこの「日本物語。あるいは日本といふ物語」の「前書」に代えさせていただきます。


    目 次    


    プロローグ     歌座本巻へ   ノート


       本 文
  上 巻
 
     一 古事記  二 風土記  三 日本書紀  四 万葉集 
    五 前憲法教育勅語終戦詔書現憲法教育基本法


  中 巻
    一 源氏物語  竹取物語  三 平家物語 四 今昔物語
    五 古今集  新古今集
 七 美学・芸術論  八 地誌  

  下 巻
    一 西行  二 芭蕉  三 一茶  四 良寛 五 ブログ類集

       最終更新:二千八年一月  tes1 2 3 4  

   

       プロローグ



 
明治十四年 小学唱歌集    
 



 
   第一 かをれ

  一 かをれ。にほへ。そのふのさくら。

  二 とまれ。やどれ。ちぐさのほたる。

  三 まねけ。なびけ。野はらのすゝき。

  四 なけよ。たてよ。かは瀬のちどり。


第二 春山
はるやまに。たつかすみ。
あきやまに。わたるきり。
さくらにも。もみぢにも。
きぬきする。こゝちして。


第三 あがれ
一 あがれ。/\。広野のひばり。
二 のぼれ。/\。川瀬の若鮎。


第四 いはへ
一 いはへ。/\。きみが代いはへ。
二 しげれ。/\。ふたばの小松。


第五 千代に
一 ちよに。/\。千代ませきみは。
二 いませ/\。わが君ちよに。


第六 和歌の浦
わかの浦わに。夕しほみちくれば。
きしのむら鶴。あし辺に鳴わたる。


第七 春は花見
一 はるは。はな見。
  みよし野。おむろ。
二 あきは。つきみ。
  さらしな。をぐら。


第八 鶯
一 うぐひす。きなけ。
  うめさく。そのに。
二 かりがね。わたれ。
  霧たつ。そらに。


第九 野辺に
一 野辺に。なびく。ちぐさは。
  四方の。民の。まごゝろ。
二 はまに。あまる。まさごは。
  君が。みよの。かずなり。


第十 春風
一 春風。そよふく。やよひのあした。
  あき風。みにしむ。はつきのゆふべ
二 弥生は。野山の。はなさくさかり。
  はつきは。みそらの。月すむ夜ごろ。


第十一 桜紅葉
一 春見に。ゆきませ。芳野の桜。
  あきみて。つげませ。龍田のもみぢ。
二 よし野は。さくらの。花さくみやま。
  たちたは。紅葉の。ちりしくながれ。


第十二 花さく春
一 花さく。はるの。あしたのけしき。
  かをる。雲の。たつこゝちして。
二 あき萩。をばな。はなさきみだれ。
  もとも。末も。露みちにけり。


第十三 見わたせば
一 見わたせば。あをやなぎ。花桜。
  こきまぜて。みやこには。
  みちもせに春の錦をぞ。
  さほひめのおりなして。
  ふるあめにそめにける。
二 みわたせばやまべには。
  をのへにもふもとにも。
  うすきこき。もみぢ葉の。
  あきの錦をぞ。たつたびめ。
  おりかけてつゆ霜に。
  さらしける


第十四 松の木蔭
一 松のこかげに。たちよれば。
  ちとせのみどりぞ。身にはしむ。
  梅がえかざしに。さしつれば。
  はるの雪こそ。ふりかゝれ。
二 うめのはながさ。さしつれば。
  かしらに春の。ゆきつもり。
  鶴のけごろも。かさぬれば。
  あきの霜こそ。身にはおけ。


第十五 春のやよひ
一 春のやよひの。あけぼのに。
  四方のやまべを。見わたせば。
  はなざかりかも。しらくもの。
  かゝらぬみねこそ。なかりけれ。
二 はなたちばなも。にほふなり。
  軒のあやめも。かをるなり。
  ゆふぐれさまの。さみだれに。
  やまほとゝぎす。なのるなり。
三 秋のはじめに。なりぬれば。
  ことしもなかばは。すぎにけり。
  わがよふけゆく。月かげの。
  かたぶく見るこそ。あはれなれ。
四 冬の夜さむの。あさぼらけ。
  ちぎりし山路は。ゆきふかし。
  こゝろのあとは。つかねども。
  おもひやるこそ。あはれなれ。


第十六 わが日の本
一 わがひのもとの。あさぼらけ。
  かすめる日かげ。あふぎみて。
  もろこし人も。高麗びとも。
  春たつけふをば。しりぬべし。
二 雪間にさけぶ。ほとゝぎす。
  かきねににほふ。うつぎばな。
  夏来にけりと。あめつちに。
  あらそひつぐる。花ととり。
三 きぬたのひゞき。身にしみて。
  とこよのかりも。わたるなり。
  やまともろこし。おしなべて。
  おなじあはれの。あきの風。
四 まどうつあられ。にはのしも。
  ふもとのおちば。みねのゆき。
  みやこのうちも。やまざとも。
  ひとつにさゆる。ふゆのそら。


第十七 蝶々
一 てふ/\てふ/\。菜の葉にとまれ。
  なのはにあいたら。桜にとまれ。
  さくらの花の。さかゆる御代に。
  とまれよあそべ。あそべよとまれ。
二 おきよ/\。ねぐらのすゞめ。
  朝日のひかりの。さしこぬさきに。
  ねぐらをいでゝ。こずゑにとまり。
  あそべよすゞめ。うたへよすゞめ。


第十八 うつくしき
一 うつくしき。わが子やいづこ。
  うつくしき。わがかみの子は。
  ゆみとりて。君のみさきに。
  いさみたちて。わかれゆきにけり。
二 うつくしき。わがこやいづこ。
  うつくしき。わがなかのこは。
  太刀帯て。君のみもとに。
  いさみたちて。わかれゆきにけり。
三 うつくしき。わがこやいづこ。
  うつくしき。わがすゑのこは。
  ほことりて。きみのみあとに。
  いさみたちて。わかれゆきにけり。


第十九 閨の板戸
ねやのいたどの。あけゆく空に。
あさ日のかげの。さしそめぬれば。
ねぐらをいづる。百八十鳥は。
霞のうちに。友よびかはし。
夢みるてふも。とくおきいでゝ。
むれつゝ花に。まひあそぶなり。
あさいねする身の。そのおこたりを。
いさむるさまなる。春のあけぼの。


第二十 蛍
一 ほたるのひかり。まどのゆき。
  書よむつき日。かさねつゝ。
  いつしか年も。すぎのとを。
  あけてぞけさは。わかれゆく。
二 とまるもゆくも。かぎりとて。
  かたみにおもふちよろづの。
  こゝろのはしをひとことに。
  さきくとばかり。うたふなり。
三 つくしのきはみ。みちのおく。
  うみやまとほく。へだつとも。
  そのまごゝろは。へだてなく。
  ひとつにつくせ。くにのため。
四 千島のおくも。おきなはも。
  やしまのうちの。まもりなり。
  いたらんくにに。いさをしく。
  つとめよわがせ。つつがなく。


第二十一 若紫
一 わかむらさきの。めもはるかなる。武蔵野の。
  かすみのおく。わけつゝつむ。初若菜。
二 若菜はなにぞ。すゞしろすゞな。ほとけの座。
  はこべらせり。なづなに五行。なゝつなり。
三 なゝつの宝。それよりことに。得がたきは。
  雪消のひま。尋ねてつむ。わかななり。


第二十二 ねむれよ子
一 ねむれよ子。よくねるちごは。ちゝのみの
  父のおほせや。まもるらん。ねむれよ子。
二 ねむれよ子。よくねるちごは。はゝそばの。
  母のなさけや。したふらん。ねむれよこ。
三 ねむれよこ。よくねておきて。ちゝはゝの。
  かはらぬみ顔。をがみませ。ねむれよこ。


第二十三 君が代
一 君が代は。ちよにやちよに。さゞれ
  いしの。巌となりて。こけのむす
  まで。うごきなく。常磐かきはに。
  かぎりもあらじ。
二 きみがよは。千尋の底の。さゞれ
  いしの。鵜のゐる磯と。あらはるゝ
  まで。かぎりなき。みよの栄を。
  ほぎたてまつる。


第二十四 思ひいづれば
一 おもひいづれば。三年のむかし。
  わかれしその日。わがちゝはゝの。
  かしらなでつゝ。まさきくあれと。
  いひしおもわの。したはしきかな。
二 あしたになれば。かどおしひらき。
  日数よみつゝ。ちゝまちまさむ。
  わがおもひごは。ことなしはてゝ。
  はやいつしかも。かへり来なんと。
三 ゆふべになれば。床うちはらひ。
  およびをりつゝ。母まちまさん。
  わがおもひごは。事なしはてゝ。
  はやいつしかも。かへりこなんと。
四 あしたになれば。かどおしひらき。
  ゆふべになれば。とこうちはらひ。
  父まちまさん。母まちまさむ。
  はやく帰らん。もとの国べに。


第二十五 薫りにしらるゝ
一 かをりにしらるゝ。花さく御園。
  霞にかくるゝ。鳥なくはやし。
  君が代いはひて。幾春までも。
  かをれや/\。うたへやうたへ。
二 つきかげてりそふ。野中の清水。
  もみぢばにほへる。外山のふもと。
  きみが代たえせず。いく秋までも。
  てらせや/\にほへやにほへ。


第二十六 隅田川
一 すみだがはらの。あさぼらけ。
  雲もかすみも。かをるなり。
  水のまに/\。ふねうけて。
  花にあそばむ。ちらぬまに。
二 隅田川原の。あきの夜は。
  水もみそらも。すみわたる。
  かぜのまに/\。ふねうけて。
  月にあそばん。夜もすがら。
三 すみだがはらの。ふゆのそら。
  よは白妙に。うづもれて。
  木々のこと/゛\。はなさきぬ。
  ゆきにあそばん。消ぬまに。


第二十七 富士山
一 ふもとに雲ぞ。かゝりける。
  高嶺にゆきぞ。つもりたる。
  はだへは雪。ころもはくも。
  そのゆきくもを。よそひたる。
  ふじてふやまの。見わたしに。
  しくものもなし。にるもなし。
二 外国人も。あふぐなり。
  わがくに人も。ほこるなり。
  照る日のかげ。そらゆくつき。
  つきひとともに。かがやきて。
  冨士てふ山の。みわたしに。
  しくものもなし。にるもなし。


第二十八 おぼろ
一 おぼろににほふ。夕づき夜。
  さかりににほふ。もゝさくら。
  のどかにて。のどけき御代の。楽しみは。
  花さくかげの。このまとゐ。
  このうたげ。
二 千草にすだく。むしの声。
  をぎの葉そよぐ。風のおと。
  身にしみて。眼にみる物も。きく物も。
  あはれをそふる。あきの夜や。
  つきのよや。


第二十九 雨露
一 雨露におほみやは。あれはてにけり。
  みめぐみに。民草は。うるほひにけり。
  かくてこそ。今の世も。かまどのけぶり。
  み空にも。あまるまで。たちみちぬらめ。
二 飢ゑこゞえ。なきまどふ。民もやあると。
  身にかへて。かしこくもおもほすあまり。
  あられうつ。冬の夜に。ぬぎたまはせる。
  大御衣の。あつきその。御こゝろあはれ。

第三十 玉の宮居
一 玉のみやゐは。あれはてゝ。
  雨さへ露さへ。いとしげゝれど。
  民のかまどの。にぎはひは。
  たつ烟にぞ。あらはれにける。
二 冬の夜さむの。月さえて。
  隙もるかぜさへ。身をきるばかり。
  民をおもほす。みこゝろに。
  大御衣や。ぬがせたまひし。


第三十一 大和撫子
一 やまとなでしこ。さま/゛\に。
  おのがむき/\。さきぬとも。
  おほしたてゝし。ちゝはゝの。
  底のをしへに。たがふなよ。
二 野辺の千草の。いろ/\に。
  おのがさま/゛\。さきぬとも。
  生したてゝし。あめつちの。
  つゆのめぐみを。わするなよ。


第三十二 五常の歌
一 野辺のくさ木も。雨露の。
  めぐみにそだつ。さまみれば。
  仁てふものは。よのなかの。
  ひとのこゝろの。命なり。
二 飛騨の工が。うつ墨に。
  曲もなほる。さまみれば。
  義といふものは。世の中の。
  人のこゝろの。条理なり。
三 成像ほかに。あらはれて。
  謹慎みたる。さまみれば。
  礼てふものは。世の中の。
  ひとのこゝろの。掟なり。
四 神の蔵せる。秘事も。
  さとり得らるゝ。さまみれば。
  智といふものは。世の中の。
  人のこゝろの。宝なり。
五 月日と共に。あめつちの。
  循環たがはぬ。さまみれば。
  信てふものは。世の中の。
  人のこゝろの守りなり。


第三十三 五倫の歌
父子親あり。君臣義あり。
夫婦別あり。長幼序あり。
朋友信あり。

      〔小学〕唱歌集 第二編


(明治16年3月。歌詞のみ記す。振り仮名省略)


第三十四 鳥の声
一 とりのこえ。きぎのはなのべにみちて
  かすみけりなのどかなるはるのひや
二 むしのこゑつゆのたまのべにみちて
  ゆくもゆかれずきよらなるつきのよや


第三十五 霞か雲か
一 かすみかくもかはたゆきかとばかりにほふ
  そのはなざかりももとりさへもうたふなり
二 かすみははなをへだつれどへだてぬともと
  きてみるばかりうれしきことはよにもなし
三 かすみてそれとみえねどもなくうぐひすに
  さそはれつつもいつしかきぬるはなのかげ


第三十六 年たつけさ
一 としたつけさの。そのにぎはひは。
  みやこもひなも。へだてなく。
  毬歌うたひつ。羽子つきかはしつ。
  こゝろ/゛\に。うちつれだちて。
  かしこもこゝも。あそびゆくなり。
  都も鄙も。あそぶなり。
二 のどけき春に。はやなりぬれば。
  わかきもおいも。わかちなく。
  さく花かざしつ。なく鳥きゝつゝ。
  こゝろ/゛\に。うちつれだちて。
  やまべに野辺に。あそびゆくなり。
  山辺に野辺に。あそぶなり
三 ことしもいつか。なかばは過ぎて。
  秋風さむく。身にぞしむ。
  すゞむし松虫。はたおる虫さへ。
  ながき夜すがら。なくねをきけば。
  われらもおいの。いたらぬいたらぬさきに。
  学の道に。いそしまむ。
四 千代ながづきの。月たちぬれば。
  まがきのうちと。へだてなく。
  しら菊はなさき。紅葉かゞやく。
  菊ともみぢを。かざしにさして。
  君が代いはへ。八千代もちよも。
  わが君いはへ。よろづ世も。


第三十七 かすめる空
一 かすめるそらに。雨ふれば。
  草木もともに。うるほひぬ。
  わらへるはな。にほへるやま。
  類なの。ながめかな。
二 山の端はれて。つき清く。
  ちさとのくまも。かくれなし。
  きらめく露。なくなるむし。
  たぐひなの。秋の夜や。


第三十八 燕
一 こよや/\。こよつばくらめ。
  おやもひなも。ひねもすかたり。
  たのしみし。その巣をいでゝ。
  とほき国辺に。たちわかるとも。
  帰り来よや。わがやどり。
  かへりこよや。つばくらめ。
二 来なけ/\。やまほとゝきす。
  われもひとも。夜はよもすがら。
  いねもせず。深山をいでゝ。
  都のそらに。なけほとゝぎす。
  なのれ/\。わがやどに。
  きなけ/\。ほとゝぎす。


第三十九 鏡なす
一 かゞみなす。水もみどりの。かげ
  うつる。柳の糸の。枝をたれ。
  気霽ては。風新柳の髪を梳り。
  氷消ては。浪旧苔の。髭を洗ふとかや。
  げにおもしろの。景色やな。
  けにおもしろの。けしきやな。
二 降る雪に。樵夫のみちも。うも
  れけり。みやまのおくの。夕まぐれ。
  かざせる笠には。影もなき。月をやどし。
  担へる柴には。かをらざる。花をたをるとかや。
  げにおもしろの。けしきやな。
  げにおもしろの。景色やな。


第四十 岩もる水
いはもる水も。松ふく風も。
しらべをそふる。つま琴の音や。
あれおもしろの。こよひの月や。
こゝろにかゝる。雲霧もなし。


第四十一 岸の桜
一 岸の桜の。はなさくさかりは。
  水のそこにも。白雲かゝれり。
  すみだの川の。かはのせくだし。
  漕やをぶね。花にうかれて。
  雲にさをさし。霞にながして。
  こぐや雲ゐに。かすみの海に。
二 秋のもなかの。さやけき月夜は。
  水のそこにも。白玉しづめり。
  隅田の川の。かはの瀬のぼし。
  こぐや小舟。つきにうかれて。
  棹のしづくの。光もさながら。
  真玉しら玉。しら玉またま。


第四十二 遊猟
一 さながら山も。くづるばかりに。
  をのへにとよむ。矢玉のひゞき。
  神てふ虎も。てどりにしつゝ。
  いさみにいさむ。益荒雄の徒。
二 葦毛の馬に。しづ鞍おきて。
  あづさの真弓。手にとりしばり。
  みかりたゝすは。ますらをなれや。
  美猟たゝせる。そのいさましさ。
 
 
 

第四十三 みたにの奥
一 みたにのおくの。花鳥あはれ。
  うづまく雲の。かぐはしのよや。
  たのしき春に。あふさか山の。
  岩根によせて。君が代うたへ。
二 たり穂の稲の。ゆふ風あはれ。
  よせくる浪の。にぎはしのよや。
  ゆたけき秋に。あふさか山の。
  巌によせて。君が代いはへ。


第四十四 皇御国
一 すめらみくにの。ものゝふは。
  いかなる事をか。つとむべき。
  たゞ身に持てる。まごゝろを。
  君と親とに。つくすまで。
二 皇御国の。をのこらは。
  たわまずをれぬ。こゝろもて。
  世のなりはひを。つとめなし。
  くにと民とを。とますべし。


第四十五 栄行く御代
一 さかゆく御代に。うまれしも。おもへば
  神の。めぐみなり。いざや児等。神の恵を。
  ゆめなわすれそ。ゆめなわすれそ。
  ゆめなわすれそ。時の間も。いざやくら。
  神の恵を。ゆめなわすれそ。ゆめなわすれそ。
  ゆめなわすれそ。ときのまも。
二 恵も深き。かみがきの。みまへの
  さかき。とりもちて。ちはやぶる。
  神の御前に。うたひまはまし。うたひまはまし。
  うたひまはまし。夜もすがら。ちはやぶる。
  神の御前に。うたひまはまし。うたひまはまし。
  うたひまはまし。よもすがら。


第四十六 五日の風
一 いつかの風も。とをかの雨も。
  時に順ふ。わがきみが世や。
  にしの国より。高麗百済より。
  よりくる人も。御代いはふなり。
二 豊葦原の。みづ穂のくには。
  ちよよろづ世も。うごきなき国。
  わが君が代に。ちよよろづ代も。
  動きなき御代。いはへもろ人。


第四十七 天津日嗣
一 あまつ日つぎのみさかえは。
  あめつちの共。きはみなし。
  わがひのもとの。みひかりは。
  月日とゝもに。かゞやかん。
二 葦原の。ちいほあき。瑞穂
  のくには。日の御子の。
  きみとますべき。ところぞと。
  神のみよゝり。さだまれり。


第四十八 太平の曲
一 ゆはづのさわぎ。飛火のけぶり。
  いつしかたえて。をさまる御世は。
  あめつちさへも。とゞろくばかり。
  万代までと。君が代いはへ。
二 たひらのみやこ。百敷の宮。
  みあとになして。むさしの国に。
  しづまりましぬ。年は三千とせ。
  代は百二十。御功績あふげ。


第四十九 みてらの鐘の音
一 みてらの鐘のね。月よりおつる。
  ふみよむ燈火。かすかになりて。
  一二三四五六七八。
二 月影かたぶき。霜さえわたり。
  ねよとの鐘のね。枕にひゞく。
  一二三四五六七八。
三 漁火しめりて。霜天にみち。
  姑蘇城外なる。鐘かもきこゆ。
  一二三四五六七八。


       〔小学〕唱歌集 第三編  
       
(明治17年3月)



第五十 やよ御民
一 やよみたみ。稲をうゑ。井の
  水たゝへ。君が代は。腹つゞみ
  うち。身をいはへ。
二 やよ御民。萱をかり。わが
  家をふきて。君が代は。雨露
  しのぎ。世をわたれ。


第五十一 春の夜
一 かすみにきゆる。かりがね
  も。かすかにひゞく。笛の
  音も。をさまる御代の。
  しらべにて。たのしき
  はるの。ゆふぐれや。
  ともし火とりて。むかし
  のひとの。あそびし
  夜半も。かゝりけん。
  世はさま/゛\と。おもひし
  を。むかしもいまも。
  かくさきにほふ。
  はなにはそむく。
  人ぞなき。


第五十二 なみ風
一 浪かぜさかまく。あをうな
  ばらに。暗路をたどれる。
  ふれ人あはれ。やみ路を
  たどれる。船人あはれ。命と
  たのむは。棹かぢなれや。/\
二 虎さへうそぶく。荒山中に。
  やみぢにまよへる。たび人
  あはれ。やみぢにまよへる。
  旅人あはれ。いのちとたのむは。
  ともし火なれや。/\


第五十三 あふげば尊し
一 あふげばたふとし。わが師の恩。
  教の庭にも。はやいくとせ。
  おもへばいと疾し。このとし月。
  今こそわかれめ。いざゝらば。
二 互にむつみし。日ごろの恩。
  わかるゝ後にも。やよわするな。
  身をたて名をあげ。やよはげめよ。
  いまこそわかれめ。いざゝらば。
三 朝ゆふなれにし。まなびの窓。
  ほたるのともし火。つむ白雪。
  わするゝまぞなき。ゆくとし月。
  今こそわかれめ。いざゝらば。


第五十四 雲
一 瞬間には。やまをおほひ。
  うちみるひまにも。海をわたる。
  雲てふものこそ。くすしくありけれ。
  くもよ/\。雨とも霧とも。みるまに
  変りて。あやしく奇きは。雲よ/\。
二 ゆふ日にいろどる。橋をわたし。
  みそらに声せぬ。浪をおこす。
  雲てふものこそ。奇しくありけれ。
  雲よ/\。なきかとおもへば。おほ空
  おほひて。あやしく奇きは。雲よ/\。


第五十五 寧楽の都
一 奈良のみやこの。そのむかし。
  みやびつくして。宮びとの。
  遊びましけん。龍田川原の。紅葉。
  たつたがはらのもみぢば。今もにほふ。
  ちしほの色に。残るかたみは。
  千代もくちせず。今かいまかと。
  君をまつらん。その紅葉。
二 ふるきみやこの。そのむかし。
  桜かざして。おほきみの。
  あそびましけん。滋賀の
  花園。はなさき。しがの花
  ぞの。花さき。今もにほふ。
  色香をそへて。ゑめる姿は。
  ちよもかはらす。今やいまやと。
  行幸まつらん。その花は。
 
 
 

第五十六 才女 
一 かきながせる。筆の
  あやに。そめしむらさき。
  世々あせず。ゆかりのいろ。
  ことばのはな。たぐひも
  あらじ。そのいさを。
二 まきあげたる。小簾の
  ひまに。君のこゝろも。
  しら雪や。廬山の峯。
  遺愛のかね。めにみるごとき。
  その風情。


第五十七 母のおもひ
一 はゝのおもひは。空にみち。
  ゆくへもしらず。はてもなし。
  つきの桂を。たをりてぞ。
  家の風をば。ふかせつる。
  あふげ/\。母のみいさを。
二 母のなさけの。撫子よ。露
  なわすれそ。めぐみをば。
  家をうつすも。そだて草。
  機をきるさへ。教へぐさ。
  したへ/\。母のなさけを。


第五十八 めぐれる車
一 めぐれる車。ながるゝ水。われらは
  いこへど。やむ間なし。
二 岩根をつたふ。しづくの水。積れば
  つひに。海となる。


第五十九 墳墓
一 松ふく風は。こゝろにしみて。
  おもへばあはれ。わがなき父の。
  奥津城どころ。
二 浅茅が露に。むしのねかれて。
  おもへばあはれ。わがなき母の。
  おくつきどころ。
三 苔むす墳は。文字さへ消えて。
  おもへばあはれ。いづれのひとの。
  なきあとなれや。


第六十 秋の夕暮
一 花や紅葉も。およぶものかは。
  浦のとまやの。秋のゆふぐれ。
二 こゝろなき身も。あはれしれとや。
  鴫たつ沢の。あきの夕暮。
三 あはれさびしや。色はなけれど。
  槙たつ山の。あきの夕ぐれ。

第六十一 古戦場
 
一 屍は朽て。骨となり。刃はをれて。
  しもむすぶ。今はた靡く。旗薄。
  皷のおとか。まつ風か。
二 人影みえず。風さむし。蓬はかれて。
  霜しろし。命を捨し。真荒雄が。
  その名は千代。も朽せじな。


第六十二 秋艸
一 さきのこりたる。あさがほや。
  命とたのむ。つゆも浅ぢの。
  あさがほや。
二 あや錦おる。はぎがはな。
  たまもいろなる。霜ぞこぼるゝ。
  萩がはな。
三 たれまねくらん。はなすゝき。
  風もふかぬに。露ぞみだるゝ。
  はなすゝき。


第六十三 富士筑波
一 駿河なる。ふじの高嶺を。
  あふぎても。動かぬ御代は。
  しられけり。
二 つくばねの。このもかの面も。
  てらすなる。みよのひかりぞ。
  ありがたき。


第六十四 園生の梅
 
一 そのふの梅の。追風に。わがすむ山も。
  春めきぬ。門田の雪も。むら消て。
  若菜つむべく。野はなりぬ。
二 弥生のそらに。野辺みれば。菫の
  花さく。山みれば。雪かあらぬか。そこ
  かしこ。桜の花も。さきそめぬ。


第六十五 橘
一 ちゝの実の。父やもうゑし。
  なつかしき。かにこそにほへ。
  よにふるさとの。花の橘。
二 はゝそばの。母やもうゑし。
  したはしき。かをりぞすなる。
  しのぶの里の。花の橘。


第六十六 四季の月
一 さきにほふ。やまのさくらの。
  花のうへに。霞みていでし。
  はるのよの月。
二 雨すぎし。庭の草葉の。
  つゆのうへに。しばしはやどる。
  夏の夜の月。
三 みるひとの。こゝろ/\に。
  まかせおきて。高嶺にすめる。
  あきのよの月。
四 水鳥の。声も身にしむ。
  いけの面に。さながらこほる。
  冬のよの月。


第六十七 白蓮白菊
一 泥のうちより。ぬけいでゝ。濁りにしまぬ。
  はな蓮。月のひかりか。ひるすごく。
  霜とさゆれば。夏さむし。乱るゝ露は。
  たまとみえ。かをれる風は。身にぞしむ。
  氷のすがた。雪のいろ。つゆなけがしそ。
  世のちりに。
二 草木もかれし園の中。雪にも色は。
  まさりぐさ。いたゞく霜は。身をよそひ。
  さえゆく月は。香ににほふ。霜はくすりと。
  きくの水。梅はみさをの。おのがとも。
  暗の夜はさへ。てらすなり。東籬の
  もとに。書やみん。/\。


第六十八 学び
一 まなびはわが身の。光りとなり。
  富貴も。栄花も。こゝろのまゝ。
二 驕りはわが身の。仇とぞなる。
  努々ゆるすな。こゝろの駒。
三 学びはわが身の。ひかりなり。
  驕りはわが身の。仇とぞなる。


第六十九 小枝
一 さえだにやどれる。小鳥さへ。
  礼はしる。道をもならひし。
  その人を。わするなよ。
二 吾家にかひぬる。犬さへも。
  恩はいる。君にもつかふる。
  大丈夫よ。身をつくせ。


第七十 船子
一 やよふな子。こげ船を。
  こげよ/\。/\/\。
  やよふな子。
二 しほみちて。風なぎぬ。
  こげよ/\。/\/\。
  やよふな子。


第七十一 鷹狩
一 しらふの鷹を。手にすゑもち。
  馬にまたがり。いさめる君。
  すはや狩場に。ゆけ/\/\。
二 雪は狩場に。ふれ/\/\。
  犬はかり場を。かれ/\/\。
  鳥ぞむれたつ。それ/\/\。


第七十二 小船
一 流るゝ水の。うへにもさく花。
  こゝろせよや。をぶね。
  底にもはなのかげ。
二 渕瀬もみえず。そらより散花。
  こゝろせよや。をぷね。
  袖にも花の浪。


第七十三 誠は人の道
一 まことは人の。道ぞかし。つゆな
  そむきそ。其みちに。
二 こゝろは神の。たまものぞ。露な
  けがしそ。そのたまを。


第七十四 千里のみち
一 千里の道も。足もとよりぞ。始まれる。
  葉末の露も。積れば渕と。なるぞかし。
二 雲ゐる山も。塵ひぢよりぞ。なれりける。
  書よむ道も。ことわりのみは。ひとつなり。


第七十五 春の野
一 いつしか雪も。きえにけり。
  梅さく野辺に。いざゆかん。
二 みどりに草も。もえぬれば。
  わかなつむ子も。うちむれて。
三 柳のいとも。なびくなり。
  こゝろをのべに。あそばまし。


第七十六 瑞穂
一 蒼生の。いのちの種と。かしこき
  神の。たまへるたねぞ。
二 採る手もたゆき。山田の早苗。
  ゆたけき秋の。たのみもしるし。
三 わづかにのこる。門田のいねを。
  苅るまで残れ。夕日のかげも。
四 ことしの稲の。初穂をとりて。
  新嘗つかへ。神をぞまつる。


第七十七 楽しわれ
一 たのしわれ。まなびもをへ。
  日もくれぬ。あすもまた。
  朝とくより。学ばまし。かくて
  年月。たえせざらば。月の桂
  をも。われぞをるべき。
二 うれしわれ。ふみよみはて。
  ひもくれぬ。あすもまた。
  朝とくより。勉めまし。かくて
  とし月。撓まざらば。龍の腮
  なる。玉もとるべし。


第七十八 菊
一 庭の千草も。むしのねも。
  かれてさびしく。なりにけり。
  あゝしらぎく。嗚呼白菊。
  ひとりおくれて。さきにけり。
二 露にたわむや。菊の花。
  しもにおごるや。きくの花。
  あゝあはれ/\。あゝ白菊。
  人のみさをも。かくてこそ。


第七十九 忠臣
一 嗚呼香ぐはし。楠の二本。あゝ絶せじ。
  みなと川。浪の音も。身にぞしむ
  なる。其あはれその功績。忠臣
  嗚呼忠臣。兄弟の人。忠臣あゝ
  忠臣。たぐひなや。
二 嗚呼かぐはし。花の二もと。あゝうるはし。
  芳野やま。ちりはてゝ世にこそ残れ。
  そのうたと。そのまこと。忠臣
  あゝ忠臣。兄弟のひと。忠臣嗚呼
  忠臣。たぐひなや。


第八十 千草の花
一 千草の花は。露をそめ。野中の
  水は。月やどる。そまらぬいろと。空の
  かげ。はかなきものか。よの中は。
二 錦をよそふ。萩の花。もみぢを
  さそふ。夜はの霜。夢野のあとゝ。
  消ゆかば。木枯ばかり。あれぬべし。
三 はかなきものを。誰めでん。きえゆく
  ものを。たれとはん。跡あるものは。筆
  の花。かをりをのこせ。後のよに。


第八十一 きのふけふ
一 きのふけふと。思ひしを。春は過て。
  夏来ぬ。雁はかへり。燕きぬ。君は
  ゆきて。かへらず。かへれ/\。/\とく。
  あはれ/\。わが友。花は散りて。あと
  もなく。空しき枝に。風ふく。
二 松は常磐。竹は千代。人の世のみ。
  つねなし。雪にほゆる。薬さへ。人の
  世には。かひなし。かへれ/\。/\とく。
  あはれ/\。わが友。君をおきて。友
  もなし。たちつゝゐつゝ。わがまつ。


第八十二 頭の雪
一 草木にのみと。おもひしを。春秋
  とほく。へだゝれば。隔てぬ君が。
  頭にも。ふりけるものか。雪と霜と。
二 面のなみを。みあげても。久しき
  としは。しられたり頭の雪の。光り
  にも。みえけるものを。高き齢。


第八十三 さけ花よ
一 さけ花よ。さくらの花よ。
  のどけき春の。さかりの時に。
  さけ花よ。桜のはなよ。
二 ふけかぜよ。春風ふけよ。
  さきたる花をちらさぬほどに。
  ふけ風よ。はるかぜふけよ。
三 なけ蛙。やよなけかはづ。
  すみゆく水の。にごらぬ御代に。
  なけかはづ。やよ鳴け蛙。
四 なけ鳥よ。うぐひすなけよ。
  さきたる花の。さかりの春に。
  なけとりよ。鶯なけよ。
五 やよ人よ。ひと/\うたへ。
  鶯かはづ。うたをぱうたふ。
  やよ人よ。ひと/\うたへ。


第八十四 高嶺
一 たかねをこえて。
  日はいでにけり。
  わがなすわざを。
  たすけむため
  に。日はいでに
  けり。
二 つき日のかげは。
  わが身のまもり。
  空しくなすな。
  しばしのひまも。
  つとめよはげめ。


第八十五 四の時
一 よつのとき。ながめぞ
  つきぬ。春ははな。
  おりなす錦。あきは
  月。ますみのかゞみ。
  なつごろも。かとりも
  すゞし。冬のあさけ
  雪もよし。ひとの
  世の。たのしきものか。
  神の恩。国のおん。
  君の恩。わするな人。


第八十六 花月
一 花を見る時は。こゝろいとたのし。
  心たのしきは。花のめぐみなり。
二 月をみる時は。心しづかなり。
  こゝろ静けきは。月の恵なり。
三 よきをみて移り。悪をみてさけよ。
  朱に交はれば。あかくなるといふ。


第八十七 治る御代
一 治る御代の。春の空。たゞよふ雲も。
  はれにけり。晴るゝみそらの。その
  雲は。めぐみの風に。はるゝなり。
二 治るみよの。春の風。千里の外に。
  みてるなり。みてるめぐみの。風に
  こそ。青人草は。さかゆらめ。


第八十八 祝へ吾君を
一 祝へ吾君を。恵の重波。やしまに
  あふれ。普ねき春風。草木もなびく。
  いはへ/\。国の為。わが君を。
二 祝へ吾国を。瑞穂のおしねは。野もせ
  にみちて。しろかね黄金。花咲栄ゆ。
  いはへ/\。君の為。わが国を。


第八十九 花鳥
一 山ぎはしらみて。雀はなきぬ。はや疾く
  おきいで。書よめわが子。書よめ吾子。
  ふみよむひまには。花鳥めでよ。
二 書よむひまには。花鳥めでよ。鳥なき
  花咲。たのしみつきず。楽みつきず。
  天地ひらけし。始もかくぞ。


第九十 心は玉
一 こゝろは玉なり。曇りもあらじ。
  よる昼勉めて。みがきに磨け。
二 蛍をあつめて。まなびし人も。
  ひかりは其まゝ。身にこそそはれ。
三 月影したひて。学びし人は。
  ひかりをうけえて。世をこそ照らせ。


第九十一 招魂祭
一 こゝに奠る。君が霊。蘭はくだけて。
  香に匂ひ。骨は朽ちて。名をぞ残す。
  机代物。うけよ君。
二 此所にまつる。戦死の人。骨を砕くも。
  君が為。国のまもり。世々の鑑。
  光りたえせじ。そのひかり。
 
              巻頭


 



 
    五箇条のご誓文


   一、広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スベシ

 

 一、上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸(けいりん)ヲ行フベシ

 

 一、官武一途庶民ニ至ルマデ各(おのおの)其(その)志ヲ遂ゲ
     人心ヲシテ倦(う)マザラシメンコトヲ要ス

 

 一、旧来ノ陋習(ろうしふ)ヲ破リ天地ノ公道ニ基(もとづ)クベシ

 

 一、知識ヲ世界ニ求メ大(おほい)ニ皇基ヲ振起スベシ




     大日本帝国憲法1   


          明治22年2月11日公布、明治23年11月29日施行
告文
皇朕レ謹ミ畏ミ
皇祖
皇宗ノ神霊ニ誥ケ白サク皇朕レ天壌無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ宝祚ヲ継承シ旧図ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニ世局ノ進運ニ膺リ人文ノ発達ニ随ヒ宜ク
皇祖
皇宗ノ遺訓ヲ明徴ニシ典憲ヲ成立シ条章ヲ昭示シ内ハ以テ子孫ノ率由スル所ト為シ外ハ以テ臣民翼賛ノ道ヲ広メ永遠ニ遵行セシメ益々国家ノ丕基ヲ鞏固ニシ八洲民生ノ慶福ヲ増進スヘシ茲ニ皇室典範及憲法ヲ制定ス惟フニ此レ皆
皇祖
皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述スルニ外ナラス而シテ朕カ躬ニ逮テ時ト倶ニ挙行スルコトヲ得ルハ洵ニ
皇祖
皇宗及我カ
皇考ノ威霊ニ倚藉スルニ由ラサルハ無シ皇朕レ仰テ
皇祖
皇宗及
皇考ノ神祐ヲ祷リ併セテ朕カ現在及将来ニ臣民ニ率先シ此ノ憲章ヲ履行シテ愆ラサラムコトヲ誓フ庶幾クハ
神霊此レヲ鑒ミタマヘ
憲法発布勅語
朕国家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣栄トシ朕カ祖宗ニ承クルノ大権ニ依リ現在及将来ノ臣民ニ対シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス
惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼ニ倚リ我カ帝国ヲ肇造シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威徳ト並ニ臣民ノ忠実勇武ニシテ国ヲ愛シ公ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル国史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕我カ臣民ハ即チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ回想シ其ノ朕カ意ヲ奉体シ朕カ事ヲ奨順シ相与ニ和衷協同シ益々我カ帝国ノ光栄ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負担ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ

朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ万世一系ノ帝位ヲ践ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ祖宗ノ恵撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ発達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼賛ニ依リ与ニ倶ニ国家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履践シ茲ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム
国家統治ノ大権ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ伝フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ将来此ノ憲法ノ条章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ
朕ハ我カ臣民ノ権利及財産ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範囲内ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス
帝国議会ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議会開会ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有効ナラシムルノ期トスヘシ
将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ
朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順ノ義務ヲ負フヘシ
御名御璽
明治二十二年二月十一日
 
内閣総理大臣      
伯爵 黒田 清隆
枢密院議長       
伯爵 伊藤 博文
外務大臣        
伯爵 大隈 重信
海軍大臣        
伯爵 西郷 従道
農商務大臣       
伯爵 井上  馨
司法大臣        
伯爵 山田 顕義
大蔵大臣 兼 内務大臣 
伯爵 松方 正義
陸軍大臣        
伯爵 大山  巌
文部大臣        
子爵 森  有礼
逓信大臣        
子爵 榎本 武揚
第1章 天  皇  

第1条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス

第2条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス

第3条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス

第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ

第5条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行

第6条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス

第7条 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス

第8条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ依リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

第9条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ案寧秩序ヲ保持シ及臣民ニ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス

第10条 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル

第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス

第12条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム

第13条 天皇ハ戦イヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス

第14条 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以之ヲ定ム

第15条 天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与スル

第16条 天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス

第17条 摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ

第2章 臣民権利義務

第18条 日本臣民タル要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル

第19条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均シク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得

第20条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス

第21条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス

第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ移住及移転ノ自由ヲ有ス

第23条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ

第24条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルルコトナシ

第25条
 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク他其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ捜索サルルコトナシ

第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク他信書ノ秘密ヲ侵サルルコトナシ

第27条 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ
 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル

第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス

第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス

第30条 日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得

第31条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇体権ノ施行ヲ妨クルコトナシ

第32条 本章ニ掲ゲタル条規ハ陸海空軍ノ法令又ハ規律ニ牴触セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス

第3章 帝国議会

第33条 帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス

第34条 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第35条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第36条 何人モ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ス

第37条 凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス

第38条 両議院ハ政府ノ提出スル法律安ヲ議決シ及各々法律安ヲ提出スルコトヲ得

第39条 両議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス

第40条 両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同会期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス

第41条 帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス

第42条 帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅令ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ

第43条 臨時緊急ノアル場合ニ於イテ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅令ニ依ル

第44条 帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ
 衆議院解散ヲ命セラルタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ

第45条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅令ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ

第46条 両議院ハ各々其ノ総議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ為ス事ヲ得ス

第47条 両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナル時ハ議長ノ決スル所ニ依ル

第48条 両議院ノ会議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密会ト為スコトヲ得

第49条 両議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得

第50条 両議院ハ臣民リ呈出スル誓願書ヲ受クルコトヲ得

第51条 両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノノ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得

第52条 両議院ノ議員ハ議院ニ於テ発言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ処分サレルヘシ

第53条 両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱外患ニ関ル罪ヲ除ク外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕サルルコトナシ

第54条 国務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及発スルコトヲ得
第4章 国務大臣及枢密顧問

第55条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責メニ任ス
 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス

第56条 枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス
第5章 司  法

第57条 司法権ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
 裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第58条 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ任ス
 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルルコトナシ
 懲戒ノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第59条 裁判ノ対審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ノ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得

第60条 特別裁判所ノ管轄ニ属スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第61条 行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ属スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス
第6章 会  計

第62条 新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ変更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
 但シ報償ニ属スル行政上ノ手数料及其ノ他ノ収納金ハ前項ノ限ニ在ラス国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲ為スハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ

第63条  現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ旧ニ依リ之ヲ徴収ス

第64条 国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
 予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝国議会ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス

第65条 予算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ

第66条 皇室経費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年国庫ヨリ之ヲ支出シ将来増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝国議会ノ協賛ヲ要セス

第67条 憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス

第68条 特別ノ須要ニ因リ政府ハ予メ年限ヲ定メ継続費トシテ帝国議会ノ協賛ヲ求ムルコトヲ得

第69条 避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又ハ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル為ニ予備費ヲ設クヘシ

第70条 公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需要アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
 前項ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス

第71条 帝国議会ニ於イテ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ

第72条 国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト倶ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第7章 補  足

第73条 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スル必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

第74条 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ条規ヲ変更スルコトヲ得ス

第75条 憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ変更スルコトヲ得ス

第76条 法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス
 歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ総テ第67条ノ例ニ依ル


 

   教育ニ関スル勅語

朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ
我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我ガ國軆ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス
爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉ジ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ
是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラズ又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス
朕爾臣民ト倶ニ挙挙服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ

明治二十三年十月三十日
御名御璽


朕(ちん)惟(おも)フニ我(わ)カ皇祖(くわうそく)皇宗國(わうそうくに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏(くわう)遠(ゑん)ニ徳ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ
  我(わ)カ臣民(しんみん)克(よ)ク忠ニ克(よ)ク孝(かう)ニ億兆(おくてう)心ヲ一(いつ)ニシテ世々厥(よよそ)ノ美ヲ済(な)セルハ此(こ)レ我(わ)カ國體(こくたい)ノ精華(せいくわ)ニシテ教育(けういく)ノ淵源(えんげん)亦(また)実(じつ)ニ此(ここ)ニ存(そん)ス
  爾(なんぢ)臣民父母ニ孝(かう)ニ兄弟(ていけい)ニ友(いう)ニ夫婦相和(あひわ)シ朋友(ほういう)相信(あひしん)シ恭倹(きょうけん)己(おの)レヲ持(ぢ)シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修(をさ)メ業(げふ)ヲ習ヒ以(もつ)テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就(じやうじゆ)シ進(すすん)テ公益ヲ広メ世務(せいむ)ヲ開キ常ニ國憲ヲ重(おもん)シ國法ニ遵(したが)ヒ一旦(いつたん)緩急(くわんきふ)アレハ義勇公ニ奉(ほう)シ以(もつ)テ天壌(てんじゃう)無窮(むきゅう)ノ皇運(くわううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘシ
  是(かく)ノ如キハ独リ朕(ちん)カ忠良(ちゆうりやう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス又以(もつ)テ爾(なんぢ)祖先ノ遺風(ゐふう)ヲ顕彰(けんしやう)スルニ足ラン

 
斯(こ)ノ道ハ實(じつ)ニ我(わ)カ皇祖(くわうそ)皇宗(くわうそう)ノ遺訓(ゐくん)ニシテ子孫臣民(しんみん)ノ倶(とも)ニ遵守(じゅんしゅ)スヘキ所之(これ)ヲ古今(ここん)ニ通シテ謬(あやま)ラス之(これ)ヲ中外(ちゆうぐわい)ニ施(ほどこ)シテ悖(もと)ラス

            明治二十三年十月三十日
             御 名 御 璽 (ぎよめい ぎよじ)



         

              
      



   
終戦詔書 (玉音放送) 
   
一九四五年(昭和二十年)八月十五日正午 

朕深く世界の大勢と帝國の現状とに鑑み非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し茲(ここ)に忠良なる爾(なんぢ)臣民に告く
朕は帝國政府をして米英支蘇四國に対し其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり
抑々帝國臣民の康寧を図り万邦共榮の楽を偕にするは皇祖皇宗の遺範にして朕の拳々(けんけん)措(お)かさる所
曩(さき)に米英二國に宣戰せる所以も亦実に帝國の自存と東亞の安定とを庶幾するに出て他國の主權を排し領土を侵すか如きは固(もと)より朕か志にあらす
然るに交戰己に四歳を閲し朕か陸海將兵の勇戰朕か百僚有司の励精朕か一億衆庶の奉公各々最善を尽せるに拘らす戰局必すしも好転せす世界の大勢亦我に利あらす
加之敵は新に残虐なる爆彈を使用して頻(しきり)に無辜を殺傷し惨害の及ふ所眞に測るへからさるに至る
而(しか)も尚交戰を継続せむか終に我か民族の滅亡を招來するのみならす延て人類の文明をも破却すへし
斯の如くは朕何を以てか億兆の赤子を保し皇祖皇宗の神霊に謝せむや是れ朕か帝國政府をして共同宣言に応せしむるに至れる所以なり
朕は帝國と共に終始東亞の解放に協力せる諸盟邦に対し遺憾の意を表せさるを得す
帝國臣民にして戰陣に死し職域に殉し非命に斃れたる者及其の遺族に想を致せは五内爲に裂く
且戰傷を負ひ災禍を蒙り家業を失ひたる者の厚生に至りては朕の深く軫念(しんねん)する所なり
惟ふに今後帝國の受くへき苦難は固より尋常にあらす
爾臣民の衷情も朕善く之を知る
然れとも朕は時運の趨く所堪へ難きを堪へ忍ひ難きを忍ひ以て万世の爲に太平を開かむと欲す
朕は茲に國體を護持し得て忠良なる爾臣民の赤誠に信倚し常に爾臣民と共に在り
若し夫れ情の激する所濫に事端を滋(しげ)くし或は同胞排擠(はいせい)互に時局を亂り爲に大道を誤り信義を世界に失ふか如きは朕最も之を戒む
宜しく擧國一家子孫相傳へ確く神州の不滅を信し任重くして道遠きを念(おも)ひ総力を將來の建設に傾け道義を篤くし志操を鞏(かた)くし誓て國體の精華を発揚し世界の進運に後れさらむことを期すへし爾臣民其れ克く朕か意を體せよ


    昭和二十一年年頭詔書


 ここに新年を迎ふ。かへりみれば明治天皇、明治のはじめに、国是として五箇条の御誓文を下し給へり。

 

 いはく、

 一、広く会議を興し、万機公論に決すべし

 一、上下心を一にして、盛んに経綸を行ふべし。

 一、官武一途庶民に至るまで、おのおのその志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す。

 一、旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし。

 一、知識を世界に求め、おほいに皇基を振起すべし。

 

 叡旨公明正大、また何をか加へん。朕(ちん)は個々に誓ひ新たにして、国運を開かんと欲す。すべからくこの御趣旨にのつとり、旧来の陋習を去り、民意を暢達し、官民挙げて平和主義に徹し、教養豊かに文化を築き、もつて民生の向上をはかり、新日本を建設すべし。

 

 大小都市のかうむりたる戦禍、罹災者の艱苦、産業の停頓、食糧の不足、失業者増加の趨勢等は、まことに心をいたましむるものあり。しかりといへども、わが国民が現在の試練に直面し、かつ徹頭徹尾文明を平和に求むるの決意固く、よくその結束をまつたうせば、ひとりわが国のみならず、全人類のために輝かしき前途の展開せらるゝることを疑はず。それ、家を愛する心と国を愛する心とは、わが国において特に熱烈なるを見る。いまや実に、この心を拡充し、人類愛の完成に向かひ、献身的努力をいたすべきの時なり。

 

 思ふに長きにわたれる戦争の敗北に終りたる結果、わが国民のややもすれば焦燥に流れ、失意の淵に沈淪(ちんりん)せんとするの傾きあり。詭激(きげき)の風やうやく長じて、道義の念すこぶる衰へ、ために思想混乱あるは、まことに深憂にたへず。

 

 しかれども、朕は汝ら国民とともにあり。常に利害を同じうし、休戚(きうせき)を分かたんと欲す。朕と汝ら国民との紐帯(ちうたい)は、終始相互の信頼と敬愛とによりて結ばれ、単なる神話と伝説によりて生ぜるものにあらず。天皇をもつて現御神(あきつかみ)とし、かつ日本国民をもつて他の民族に優越せる民族として、ひいて世界を支配すべき使命を有すとの架空なる観念に基づくものにもあらず。

 

 朕の政府は、国民の試練と苦難とを緩和せんがため、あらゆる施策と経営とに万全の方途を講ずべし。同時に朕は、わが国民が時難に決起し、当面の困苦克服のために、また産業および文運振興のために、勇往(ゆうわう)せんことを祈念す。わが国民がその公民生活において団結し、あひより助け、寛容あひ許すの気風を作興(さくこう)するにおいては、よくわが至高の伝統に恥ぢざる真価を発揮するに至らん。かくのごときは、実にわが国民が人類の福祉と向上とのため、絶大なる貢献をなすゆゑんなるを疑はざるなり。一年の計は年頭にあり。朕は朕の信頼する国民が、朕とその心を一(いつ)にして、みづから誓ひ、みづから励まし、もつてこの大業を成就せんことをこひねがふ。

 

御名 御璽

    昭和二十一年一月一日

 


  

 

  日本国憲法

      昭和21(1946)年11月3日公布 昭和22(1947)年5月3日施行

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


第一章 天皇
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

第五条 皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。


第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


第三章 国民の権利及び義務
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三条 学問の自由は、これを保障する。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁止する。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。


第四章 国会
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに、議員の半数を改選する。

第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

第四十八条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。

第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

第五十五条 両議院は各〃その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第五十六条 両議院は、各〃その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議員の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各〃その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

第五十八条 両議院は、各〃その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各〃その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くこを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

第六十二条 両議院は、各〃国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。


第五章 内閣
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

第七十一条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は害されない。


第六章 司法
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第七十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときに退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。


第七章 財政
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を経なければならない。

第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して、国会の議決を経なければならない。

第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。


第八章 地方自治
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

第九十五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。


第九章 改正
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


第十一章 補則
第百条 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。
2 この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
第百一条 この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。

第百二条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。

第百三条 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。


     教育基本法全文

     一九四七(昭二二)・三・三一  法律二五

 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育を確立するため、この法律を制定する。

第一条(教育の目的)
 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

第二条(教育の方針)
 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。

第三条(教育の機会均等)
 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。

第四条(義務教育)
 国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。

第五条(男女共学)
 男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであって、教育上男女の共学は、認められなければならない。

第六条(学校教育)
 法律に定める学校は、公の性質をもつものであって、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

第七条(社会教育)
 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の利用その他適当な方法によって教育の目的の実現に努めなければならない。

第八条(政治教育)
 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

第九条(宗教教育)
 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

第十条(教育行政)
 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

第十一条(補則)
 この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。

               プロローグ・了

                        巻頭




       
   本 文

   

        日本といふ物語 



      



    古事記   

    上卷并序

臣安萬侶言。夫混元既凝。氣象未效。無名
無爲。誰知其形。然乾坤初分。參神作造化
之首。陰陽斯開。二靈爲群品之祖。所以出
入幽顯。日月彰於洗目。浮沈海水。神祇呈
於滌身。故太素杳冥。因本教而識孕土産
嶋之時元始綿[辷貌]。頼先聖而察生神立人
之世。寔知懸鏡吐珠。而百王相續。喫釼切
蛇。以萬神蕃息歟。議安河而平天下。論小
濱而清國土是以番仁岐命。初降于高千
嶺。神倭天皇。經歴于秋津嶋。化熊出爪。天
釼獲於高倉。生尾遮徑。大烏導於吉野。列
[イ舞]攘賊。聞歌伏仇。即覺夢而敬神祇。所以
稱賢后。望烟而撫黎元。於今傳聖帝。定境
開邦。制于近淡海。正姓撰氏。勒于遠飛鳥。
雖歩驟各異。文質不同。莫不稽古以繩風
猷於既頽。照今以補典教於欲絶。曁飛鳥
清原大宮。御大八洲天皇御世。濳龍體元。
[シ存]雷應期。聞夢歌而相纂業。投夜水而知
承基。然天時未臻。蝉蛻於南山。人事共洽。
虎歩於東國。皇輿忽駕。浚渡山川。六師雷
震。三軍電逝。杖矛擧威。猛士烟起。絳旗耀
兵。凶徒瓦解。未移浹辰。氣[シ診−言]自清。乃放牛
息馬。ト悌歸於華夏。卷旌〓戈。[イ舞]詠停於
都邑。歳次大梁。月踵侠鍾。清原大宮。昇即
天位。道軼軒后。徳跨周王。握乾符而ハ六
合。得天統而包八荒。乘二氣之正。齊五行
之序。設神理以奬俗。敷英風以弘國。重加
智海浩瀚。潭探上古。心鏡[火韋]煌。明覩先代。
於是天皇詔之。朕聞諸家之所〓。帝紀及
本辭。既違正實。多加虚僞。當今之時。不改
其失。未經幾年。其旨欲滅。斯乃邦家經
緯。王化之鴻基焉。故惟撰録帝紀。討覈舊
辭。削僞定實。欲流後葉。時有舍人。姓稗田
名阿禮。年是廿八。爲人聰明。度目誦口。拂
耳勒心。勅語阿禮。令誦習帝皇日繼。及
先代舊辭。然運移世異。未行其事矣。伏惟
皇帝陛下。得一光宅。通三亭育。御紫宸而
徳被馬蹄之所極。坐玄扈而化照船頭之
所逮。日浮重暉。雲散非烟。連柯并穗之瑞。
史不絶書。列烽重譯之貢。府無空月。可謂
名高文命。徳冠天乙矣。於焉惜舊辭之誤
忤。正先紀之謬錯。以和銅四年九月十八
日。詔臣安萬侶。撰録稗田阿禮所誦之勅
語舊辭。以獻上者。謹隨詔旨。子細採[手庶]。然
上古之時。言意並朴。敷文構句。於字即難。
已因訓述者。詞不逮心。全以音連者。事趣
更長。是以今或一句之中。交用音訓。或一
事之内。全以訓録。即。辭理[匚ロ]見。以注明意。
况易解更非注。亦於姓日下謂玖沙訶。於
名帶字謂多羅斯。如此之類。隨本不改。大
抵所記者。自天地開闢始。以訖于小治田
御世。故天御中主神以下。日子波限建鵜
草葺不合尊以前。爲上卷。神倭伊波禮毘
古天皇以下。品陀御世以前。爲中卷。大雀
皇帝以下。小治田大宮以前。爲下卷。并録
三卷。謹以獻上。臣安萬侶。誠惶誠恐頓首
頓首。
和銅五年正月二十八日。正五位上勲五
等太朝臣安萬侶謹上。

天地初發之時。於高天原成神名。天之
御中主神【訓高下天云阿麻下此】次高御産巣日
神。次神産巣日神。此三柱神者。並獨神
成坐而。隱身也。次國椎如浮脂而。久羅
下那洲多陀用幣琉之時【琉字以上十字以音】如
葦牙因萌騰之物而。成神名。宇摩志阿
斯訶備比古遲神【此神名以音】次天之常立
神【訓常云登許訓立云多知】此二柱神亦獨神成坐
而。隱身也。
 上件五柱神者。別天神。
次成神名。國之常立神【訓常立亦如上】次豐雲
(上)野神。此二柱神亦獨神成坐而。隱身
也。次成神名。宇比地迩(上)神。次妹須比
智迩(去)神【此二神名以音】次角杙神。次妹活杙
神【二柱】次意富斗能地神。次妹大斗乃辨
神【此二神名亦以音】次淤母陀流神。次妹阿夜
(上)訶志古泥神【此二神名皆以音】次伊邪那岐
神。次妹伊邪那美神【此二神名亦以智如上】
 上件自國之常立神以下。伊邪那美
 神以前。并稱神世七代【上二柱。獨神各云一代。次
 雙十神。各合二神云一代也。】
於是天神諸命以。詔伊邪那岐命伊邪
那美命二柱神。修理固成是多陀用幣
流之國。賜天沼矛而。言依賜也。故二柱
神立【訓立云多多志】天浮橋而。指下其沼矛以
畫者。鹽許袁呂許袁呂迩【此七字以音】畫鳴
【訓鳴云那志】而。引上時。自其矛末垂落之鹽。
累積成嶋。是淤能碁呂嶋【自淤以下四字以音】於
其嶋天降坐而。見立天之御柱。見立八
尋殿。於是問其妹伊邪那美命曰。汝身
者如何成。答曰吾身者成成不成合處
一處在。爾伊邪那岐命詔。我身者。成成
而成餘處一處在。故以此吾身成餘處。
刺塞汝身不成合處而。爲生成國土奈
何【訓生云宇牟下效此】伊邪那美命答曰然善。爾
伊邪那岐命。詔然者吾與汝行迴逢是
天之御柱而。爲美斗能麻具波比【此七字以
音】如此云期。乃詔汝者自右迴逢。我者
自左迴逢。約竟以迴時。伊邪那美命先
言阿那迩夜志愛(上)袁登古袁【此十字以音下
效此】後伊邪那岐命言阿那迩夜志愛(上)
袁登賣袁。各言竟之後。告其妹曰。女人
先言不良。雖然久美度迩【此四字以音】興而。
生子水蛭子。此子者入葦船而流去。次
生淡嶋。是亦不入子之例。於是二柱神
議云。今吾所生之子不良。猶宜白天神
之御所。即共參上。請天神之命。爾天神
之命以。布斗麻迩爾【上。此五字以音】ト相而詔
之。因女先言而不良。亦還降改言。故爾
反降。更往迴其天之御柱如先。於是伊
邪那岐命。先言阿那迩夜志愛袁登賣
袁。後妹伊邪那美命言。阿那迩夜志愛
袁登古袁。如此言竟而。御合。生子淡道
之穗之狹別嶋【訓別云和氣下效此】次生伊豫之
二名嶋。此嶋者身一而有面四。毎面有
名。故伊豫國謂愛(上)比賣【此二字以音下效此】
讚岐國謂飯依比古。粟國謂大宜都比
賣【此四字以音】土左國謂建依別。次生隱伎
之三子嶋。亦名天之忍許呂別【許呂二字以音】
次生筑紫嶋。此嶋亦身一而有面四。毎
面有名。故筑紫國謂白日別。豐國謂豐
日別。肥國謂建日向日豐久士比泥別。
【自久至泥以音】熊曾國謂建日別【曾字以音】次生伊
岐嶋。亦名謂天比登都柱【自比至都以音訓天如云】
次生津嶋。亦名謂天之狹手依比賣。次
生佐度嶋。次生大倭豐秋津嶋。亦名謂
天御虚空豐秋津根別。故因此八嶋先
所生。謂大八嶋國。然後還坐之時。生吉
備兒嶋。亦名謂建日方別。次生小豆嶋。
亦名謂大野手(上)比賣。次生大嶋。亦名
謂大多麻(上)流別【自多至流以音】次生女嶋。亦
名謂天一根【訓天如天】次生知訶嶋。亦名謂
天之忍男。次生兩兒嶋。亦名謂天兩屋。
【自吉備兒嶋至天兩屋嶋并六嶋】既生國竟。更生神。故
生神名。大事忍男神。次生石土毘古神。
【訓石云伊波亦毘古二字以音下效此也】次生石巣比賣神。
次生大戸日別神。次生天之吹(上)男神。
次生大屋毘古神。次生風木津別之忍
男神【訓風云加邪訓木以音】次生海神。名大綿津
見神。次生水戸神。名速秋津日子神。次
妹速秋津比賣神【自大事忍男神至秋津比賣神并十神】
此速秋津日子速秋津比賣二神。因河
海持別而生神名沫那藝神【那藝二字以音。下效
此】次沫那美神【那美二字以音。下效此】次頬那藝
神。次頬那美神。次天之水分神【訓分云久麻理
下效此】次國之水分神。次天之久比奢母
智神【自久以下五字以音下效此】次國之久比奢母
智神【自沫那藝神至國之久比奢母智神并八神】次生風神
名志那都比古神【此神名以音】次生木神名
久久能智神【此神名以音】次生山神名大山
(上)津見神。次生野神名鹿屋野比賣神。
亦名謂野椎神【自志那都比古神至野椎并四神】此大
山津見神野椎神二神。因山野持別而
生神名天之狹士神【訓土云豆知下效此】次國之
狹士神。次天之狹霧神。次國之狹霧神。
次天之闇戸神。次國之闇戸神。次大戸
惑子神【訓惑云麻刀比下效此】次大戸惑女神【自天
之狹土神至大戸惑女神并八神也】次生神名鳥之石楠
船神。亦名謂天鳥船。次生大宜都比賣
神【此神名以音】次生火之夜藝速男神【夜藝二字
以音】亦名謂火之R毘古神。亦名謂火之
迦具土神【加具二字以音】因生此子。美蕃登【此三
字以音】見炙而病臥在。多具理迩【此四字以音】
生神名。金山毘古神【訓金云迦那下效此】次金山
毘賣神。次於屎成神名。波迩夜須毘古
神【此神名以音】次波迩夜須毘賣神【此神名亦音】
次於尿成神名彌都波能賣神。次和久
産巣日神。此神之子謂豐宇氣毘賣神。
【自宇以下四字以音】故伊邪那美神者。因生火神。
遂神避坐也【自天鳥船至豐宇氣毘賣神并八神。】
 凡伊邪那岐伊邪那美二神。共所生。
 嶋壹拾肆嶋。又神參拾伍神【是伊邪那美神未神
 避以前所生。唯意能碁呂嶋者。非所生。亦姪子與淡嶋。不入子之例。】
故爾伊邪那岐命詔之。愛我那迩妹命
乎【那迩二字以音下效此】謂易子之一木乎。乃匍
匐御枕方。匍匐御足方而。哭時。於御涙
所成神。坐香山之畝尾木本。名泣澤女
神。故其所神避之伊邪那美神者。葬出
雲國與伯伎國堺比婆之山也。於是伊
邪那岐命。拔所御佩之十拳劍。斬其子
迦具士神之頚。爾著其御刀前之血。走
就湯津石村。所成神名。石拆神。次根拆
神。次石筒之男神【三神】次著御刀本血。亦
走就湯津石村。所成神名。甕速日神。次
樋速日神。次建御雷之男神。亦名建布
都神【布都二字以音下效此】亦名豐布都神【三神】次
集御刀之手上血。自手俣漏出。所成神
名【訓漏云久伎】闇淤加美神【淤以下三字以音下效此】次
闇御津羽神。
 上件自石拆神以下。闇御津羽神
 以前。并八神者。因御刀所生之神者也。
所殺迦具土神之於頭所成神名。正鹿
山(上)津見神。次於胸所成神名。淤縢山
津見神【淤縢二字以音】次於腹所成神名。奧山
(上)津見神。次於陰所成神名。闇山津見
神。次於左手所成神名。志藝山津見神。
【志藝二字以音】次於右手所成神名。羽山津見
神。次於左足所成神名。原山津見神。次
於右足所成神名。戸山津見神【自正鹿山津見
神。至戸山津見神。并八神】故所斬之刀名。謂天之尾
羽張。亦名謂伊都之尾羽張【伊都二字以音】於
是欲相見其妹伊邪那美命。追往黄泉
國。爾自殿騰戸出向之時。伊邪那岐命
語詔之。愛我那迩妹命。吾與汝所作之
國未作竟。故可還。爾伊邪那美命答白。
悔哉。不速來。吾者爲黄泉戸喫。然愛我
那勢命【那勢二字以音。下效此】入來坐之事恐故。
欲還。旦具與黄泉神相論。莫視我。如此
白而。還入其殿内之間。甚久難待。故刺
左之御美豆良【三字以音下效此】湯津津間櫛
之男柱一箇取闕而。燭一火。入見之時。
宇士多加禮斗呂呂岐弖【此十字以音】於頭
者大雷居。於胸者火雷居。於腹者黒雷
居。於陰者拆雷居。於左手者若雷居。於
右手者土雷居。於左足者鳴雷居。於右
足者伏雷居。并八雷神成居。於是伊邪
那岐命見畏而。逃還之時。其妹伊邪那
美命言。令見辱吾。即遣豫子母都志許賣
【此六字以音】令追。爾伊邪那岐命取黒御鬘
投棄。乃生蒲子。是[才庶]食之間逃行猶追。
亦刺其右御美豆良之湯津津間櫛引
閉而投棄。乃生笋等。是拔食之間逃行。且
後者。於其八雷神。副千五百之黄泉軍。
令追。爾拔所御佩之十拳劍而。於後手
布伎都都【此四字以音】逃來。猶追。到黄泉比
良【此二字以音】坂之坂本時。取在其坂本桃
子三箇持撃者。悉逃返也。爾伊邪那岐
命告桃子。汝如助吾。於葦原中國所有
宇都志伎【此四字以音】青人草之落苦瀬而。
患惚時。可助告。賜名号意富加牟豆美
命【自意至美以音】最後其妹伊邪那美命。身自
追來焉。爾千引石。引塞其黄泉比良坂。
其石置中。各對立而。度事戸之時。伊邪
那美命言。愛我那勢命。爲如此者。汝國
之人草。一日絞殺千頭。爾伊邪那岐命
詔。愛我那迩妹命。汝爲然者。吾一日立
千五百産屋。是以一日必千人死。一日
必千五百人生也。故号其伊邪那美神命
謂黄泉津大神。亦云以其追斯伎斯【此三
字以音】而。號道敷大神。亦所塞其黄泉坂
之石者。號道反大神。亦謂塞坐黄泉戸
大神。故其所謂黄泉比良坂者。今謂出
雲國之伊賦夜坂也。是以伊邪那伎大
神詔。吾者到於伊那志許米(上)志許米
岐【此九字以音】穢國而在祁理【此二字以音】故吾
者爲御身之禊而。到坐竺紫日向之橘
小門之阿波岐【此三字以音】原而。禊祓也。故
於投棄御杖所成神名。衝立船戸神。次
於投棄御帶所成神名。道之長乳齒神。
次於投棄御裳所成神名。時置師神。次
於投棄御衣所成神名。和豆良比能宇
斯能神【此神名以音】次於投棄御褌所成神
名。道俣神。次於投棄御冠所成神名。飽
咋之宇斯能神【自宇以三字以音】次於投棄左
御手之手纒所成神名。奧疎神【訓奧云淤伎下
效此訓疎云奢加留下效此】次奧津那藝佐毘古神。
【自那以下五字以音下效此】次奧津甲斐辨羅神【自甲
以下四字以音下效此】次於投棄右御手之手纒
所成神名。邊疎神。次邊津那藝佐毘古
神。次邊津甲斐辨羅神。
 右件自船戸神以下。邊津甲斐辨羅
 神以前十二神者。因脱著身之物。所
 生神也。
於是詔之。上瀬者瀬速。下瀬者瀬弱而。
初於中瀬隨迦豆伎而滌時。所成坐神
名。八十禍津日神【訓禍云摩賀。下效此】次大禍津
日神。此二神者。所到其穢繁國之時。因
汚垢而。所成神之者也。次爲直其禍而
所成神名。神直毘神【毘字以音。下效此】次大直
毘神。次伊豆能賣【并三神也伊以下四字以音】次
於水底滌時。所成神名。底津綿(上)津見
神。次底筒之男命。於中滌時。所成神名。
中津綿(上)津見神。次中筒之男命。於水
上滌時。所成神名。上津綿(上)津見神【訓上
云宇閇】次上筒之男命。此三柱綿津見神
者。阿曇連等之祖神伊都久神也【伊以
三字以音。下效此】故阿曇連等者。其綿津見神
之子。宇都志日金拆命之子孫也【宇都志三
字以音】其底筒之男命、中筒之男命、上筒
之男命三柱神者。墨江之三前大神也。
於是洗左御目時。所成神名。天照大御
神。次洗右御目時。所成神名。月讀命。次
洗御御時。所成神名。建速須佐之男命
【須佐二字以音】
 右件八十禍津日神以下。速須佐之
 男命以前十四柱神者。因滌御身所
 生者也。
此時伊邪那伎命大歡喜詔。吾者生生
子而。於生終得三貴子。即其御頚珠之
玉緒母由良迩【此四字以音。下效此】取由良迦志
而。賜天照大御神而詔之。汝命者。所知
高天原矣。事依而賜也。故其御頚珠名
謂御倉板擧之神【訓板擧云多那】次詔月讀命。
汝命者。所知夜之食國矣。事依也【訓食云袁
須】次詔建速須佐之男命。汝命者所知
海原矣。事依也。故各隨依賜之命。所知
看之中。速須佐之男命。不治所命之國
而。八拳須至于心前。啼伊佐知伎也【自伊
下四字以音。下效此】其泣状者。青山如枯山泣枯。
河海者悉泣乾。是以惡神之音。如狹蝿
皆滿。萬物之妖悉發。故伊邪那岐大御
神。詔速須佐之男命。何由以汝。不治所
事依之國而。哭伊佐知流。爾答白。僕者
欲罷妣國根之堅州國故哭。爾伊邪那
岐大御神大忿怒。詔然者汝不可住此
國。乃神夜良比爾夜良比賜也【自夜以下七字
以音】故其伊邪那岐大神者。坐淡海之多
賀也。故於是速須佐之男命言。然者請
天照大御神將罷。乃參上天時。山川悉
動。國土皆震。爾天照大御神聞驚而。詔
我那勢命之上來由者。必不善心。欲奪
我國耳。即解御髮。纒御美豆羅而。乃於
左右御美豆羅。亦於御鬘。亦於左右御
手各纒持八尺勾〓之五百津之美須
麻流之珠而【自美至流四字以音。下效此】曾毘良迩
者屓千入之靭【訓入云能理下效此。自曾至迩者以音】附五
百入之靭。亦所取佩伊都【此二字以音】之竹
鞆而。弓腹振立而。堅庭者。於向股蹈那
豆美【三字以音】如沫雪蹶散而。伊都【二字以音】之
男建【訓建云多祁夫】蹈建而。待問。何故上來。爾
速須佐之男命答白。僕者無邪心。唯大
御神之命以。問賜僕之哭伊佐知流之
事故。白都良久【三字以音】僕欲往妣國以哭。
爾大御神詔。汝者不可在此國而。神夜
良比夜良比賜。故以爲請將罷往之状。
參上耳。無異心。爾天照大御神詔。然者
汝心之清明何以知。於是速須佐之男
命答白。各宇氣比而。生子【自宇以三字以音。下效
此】故爾各中置天安河而。宇氣布時。天
照大御神先乞度建速須佐之男命所
佩十拳劍。打折三段而。奴那登母母由
良迩【此八字以音。下效此】振滌天之眞名井而。佐
賀美迩迦美而【自佐下六字以音。下效此】於吹棄氣
吹之狹霧所成神御名。多紀理毘賣命
【此神名以音】亦御名謂奧津嶋比賣命。次市
寸嶋(上)比賣命。亦御名謂狹依毘賣命。
次多岐都比賣命【三柱。此神名以音】速須佐之
男命。乞度天照大御神所纏左御美豆
良八尺勾〓之五百津之美須麻流珠
而。奴那登母母由良爾。振滌天之眞名
井而。佐賀美迩迦美而。於吹棄氣吹之
狹霧所成神御名。正勝吾勝勝速日天
之忍穗耳命。亦乞度所纏右御美豆良
之珠而。佐賀美迩迦美而。於吹棄氣吹
之狹霧所成神御名。天之菩卑能命【自菩
下三字以音】亦乞度所纏御鬘之珠而。佐賀
美迩迦美而。於吹棄氣吹之狹霧所成
神御名。天津日子根命。又乞度所纏左
御手之珠而。佐賀美迩迦美而。於吹棄
氣吹之狹霧所成神御名。活津日子根
命。亦乞度所纏右御手之珠而。佐賀美
迩迦美而。於吹棄氣吹之狹霧所成神
御名。熊野久須毘命【并五柱。自久下三字以音】於是
天照大御神。告速須佐之男命。是後所
生五柱男子者。物實。因我物所成。故自
吾子也。先所生之三柱女子者。物實因
汝物所成。故乃汝子也。如此詔別也。故
其先所生之神。多紀理毘賣命者坐胸
形之奧津宮。次市寸嶋比賣命者坐胸
形之中津宮。次田寸津比賣命者坐胸
形之邊津宮。此三柱神者。胸形君等之
以伊都久三前大神者也。故此後所生
五柱子之中。天菩比命之子。建比良鳥
命【此出雲國造。无邪志國造、上菟上國造、下菟上國造、伊自牟國造、津嶋縣
直。遠江國造等之祖也】次天津日子根命者【凡川内國
造、額田部湯坐連、<茨>木國造、倭田中直、山代國造、馬來田國造、道尻岐閇國造、
周芳國造、倭淹知造、高市縣主、蒲生稻寸、三技部造等之祖也】爾速須
佐之男命。白于天照大御神。我心清明
故。我所生之子得手弱女。因此言者。自
我勝云而。於勝佐備【此二字以音】離天照大
御神之營田之阿【此阿字以音】埋其溝。亦其
於聞看大嘗之殿。屎麻理【此二字以音】散。故
雖然爲。天照大御神者。登賀米受而告。
如屎。醉而吐散登許曾【此三字以音】我那勢
之命爲如此。又離田之阿埋溝者。地矣
阿多良斯登許曾【自阿以下七字以音】我那勢之
命爲如此登【此一字以音】詔雖直。猶其惡態
不止而。轉。天照大御神。坐忌服屋而。令
織神御衣之時。穿其服屋之頂。逆剥天
斑馬剥而。所墮人時。天衣織女見驚而。
於梭衝陰上而死【訓陰上云富登】故於是天照
大御神見畏。閇天石屋戸而。刺許母理
【此三字以音】坐也。爾高天原皆暗。葦原中國
悉闇。因此而常夜往。於是萬神之聲者
狹蝿那須【此二字以音】皆滿。萬妖悉發。是以
八百萬神於天安之河原。神集集而【訓集
云都度比】高御産巣日神之子。思金神。令思
【訓金云加海尼】而。集常世長鳴鳥。令鳴而。取
天安河之河上之天堅石。取天金山之鐵
而。求鍛人天津麻羅而【麻羅二字以音】科伊斯
許理度賣命【自伊以六字以音】令作鏡。科玉祖
命。令作八尺勾〓之五百津之御須麻
流之珠而。召天兒屋命、布刀玉命【布刀二字
以音。下效此】而。内拔天香山之眞男鹿之肩
拔而。取天香山之天之波波迦【此二字以音木名】
而。令占合麻迦那波而【自麻下四字以音】天香
山之五百津眞賢木矣。根許士爾許士而
【自許下五字以音】於上枝。取著八尺勾〓之
五百津之御須麻流之玉。於中枝取繋
八尺鏡【訓八尺云八阿多】於下枝取垂白丹寸
手青丹寸手而【訓垂云志殿】此種種物者。布
刀玉命布刀御幣登取持而。天兒屋命
布刀詔戸言祷白而。天手力男神。隱立
戸掖而。天宇受賣命。手次繋天香山之
天之日影而。爲鬘天之眞拆而。手草結
天香山之小竹葉而【訓小竹云佐佐】於天之石
屋戸伏汚氣【此二字以音】而。蹈登杼呂許志
【此五字以音】爲神懸而。掛出胸乳。裳緒忍垂
於番登也。爾高天原動而。八百萬神共
咲。於是天照大御神以爲怪。細開天石
屋戸而内告者。因吾隱坐而以爲天原
自闇。亦葦原中國皆闇矣。何由以天宇
受賣者。爲樂。亦八百萬神諸咲。爾天宇
受賣。白言。益汝命而貴神坐故。歡喜咲
樂。如此言之間。天兒屋命、布刀玉命指
出其鏡。示奉天照大御神之時。天照大
御神逾思奇而。稍自戸出而。臨坐之時。
其所隱立之天手力男神。取其御手引
出。即布刀玉命。以尻久米【此二字以音】繩控
度其御後方。白言。從此以内不得還入。
故天照大御神出坐之時。高天原及葦
原中國自得照明。於是八百萬神共議
而。於速須佐之男命。負千位置戸。亦切
鬚。及手足爪令拔而。神夜良比夜良比
岐。又食物乞大氣都比賣神。爾大氣都
比賣。自鼻、口及尻。種種味物取出而。種
種作具而進時。速須佐之男命立伺其
態。爲穢汚而奉進。乃殺其大宜津比賣
神。故所殺神於身生物者。於頭生蠶。於
二月生稻種。於二耳生粟。於鼻生小豆。
於陰生麥。於尻生大豆。故是神産巣日
御祖命。令取茲。成種。故所避追而。降出
雲國之肥(上)河上在鳥髮地。此時箸從
其河流下。於是須佐之男命。以爲人有
其河上而。尋〓上往者。老夫與老女二
人在而。童女置中而泣。爾問賜之汝等
者誰。故其老夫答言。僕者國神。大山(上)
津見神之子焉。僕名謂足(上)名椎。妻名
謂手(上)名椎。女名謂櫛名田比賣。亦問
汝哭由者何。答白言。我之女者自本在
八稚女。是高志之八俣遠呂智【此三字以音】
毎年來喫。今其可來時故泣。爾問其形
如何。答白。彼目如赤加賀智而。身一有
八頭、八尾。亦其身生蘿及桧、榲。其長度
谿八谷、峽八尾而。見其腹者。悉常血爛
也【此謂赤加賀知者今酸醤者也】爾速須佐之男命詔
其老夫。是汝之女者。奉於吾哉。答白恐
亦不覺御名。爾答詔。吾者天照大御神
之伊呂勢者也。【自三字以音】故今自天降
坐也。爾足名椎、手名椎神。白然坐者恐。
立奉。爾速須佐之男命。乃於湯津爪櫛
取成其童女而。刺御美豆良。告其足名
椎、手名椎神。汝等釀八鹽折之酒。且作
迴垣。於其垣作八門。毎門結八佐受岐
【此三字以音】毎其佐受岐置酒船而。毎船盛
其八鹽折酒而待。故隨告而。如此設備
待之時。其八俣遠呂智。信如言來。乃毎
船垂入己頭。飮其酒。於是飮醉。死由伏
寢。爾速須佐之男命。拔下其所御佩之十
拳劔。切散其蛇者。肥河變血而流。故切
其中尾時。御刀之刄毀。爾思怪。以御刀
之前刺割而見者。在都牟刈之大刀。故
取此大刀。思異物而。白上於天照大御
神也。是者草那藝之大刀也【那藝二字以音】故
是以其速須佐之男命。宮可造作之地。
求出雲國。爾到坐須賀【此二字以音。下效此】地而
詔之。吾來此地。我御心須須賀賀斯而。
其地作宮坐。故其地者於今云須賀也。
茲大神初作須賀宮之時。自其地雲立
騰。爾作御歌。其歌曰。夜久毛多都。伊豆
毛夜幣賀岐。都麻碁微爾。夜幣賀岐都
久流。曾能夜幣賀岐袁*於是喚其足名
椎神。告言。汝者任我宮之首。且負名號
稻田宮主須賀之八耳神。故其櫛名田
比賣以。久美度迩起而。所生神名謂八
嶋士奴美神【自士下三字以音。下效此】又娶大山津
見神之女。名神大市比賣。生子。大年神。
次宇迦之御魂神【二柱。宇迦二字以音】兄八嶋士
奴美神。娶大山津見神之女。名木花知
流【二字以音】比賣。生子。布波能母遲久奴
須奴神。此神。娶淤迦美神之女。名日河
比賣。生子。深淵之水夜禮花神【夜禮二字以音】
此神娶天之都度閇知泥(上)神【自都下五字以
音】生子。淤美豆奴神【此神名以音】此神娶布
怒豆怒神【此神名以音】之女。名布帝耳(上)神
【布帝二字以音】生子。天之冬衣神。此神。娶刺國
大(上)神之女。名刺國若比賣。生子。大國
主神。亦名謂大穴牟遲神【牟遲二字以音】亦名
謂葦原色許男神【色許二字以音】亦名謂八千
矛神。亦名謂宇都志國玉神【宇都志三字以音】
并有五名。故此大國主神之兄弟八十
神坐。然皆國者避於大國主神。所以避
者。其八十神各有下欲婚稻羽之八上比
賣之心共行稻羽時。於大穴牟遲神負
{代巾}。爲從者率往。於是到氣多之前時。裸
菟伏也。爾八十神謂其菟云。汝將爲者。
浴此海鹽。當風吹而。伏高山尾上。故其
菟從八十神之教而伏。爾其鹽隨乾。其
身皮悉風見吹拆。故痛苦泣伏者。最後
之來大穴牟遲神見其菟。言何由汝泣
伏。菟答言。僕在淤岐嶋。雖欲度此地。無
度因。故欺海和迩【此二字以音。下效此】言。吾與汝
竸。欲計族之多少。故汝者隨其族在悉
率來。自此嶋至于氣多前皆列伏度。爾
吾蹈其上。走乍讀度。於是知與吾族孰
多。如此言者。見欺而列伏之時。吾蹈其
上讀度來。今將下地時。吾云。汝者我見
欺。言竟。即伏最端和迩捕我。悉剥我衣
服。因此泣患者。先行八十神之命以。誨
告浴海鹽當風伏。故爲如教者。我身悉
傷。於是大穴牟遲神教告其菟。今急往
此水門。以水洗汝身。即取其水門之蒲
黄。敷散而。輾轉其上者。汝身如本膚必
差。故爲如教其身如本也。此稻羽之素
菟者也。於今者謂菟神也。故其菟白大
穴牟遲神。此八十神者必不得八上比
賣。雖負{代巾}汝命獲之。於是八上比賣答
八十神言。吾者不聞汝等之言。將嫁大
穴牟遲神。故爾八十神忿。欲殺大穴牟
遲神共議而。至伯岐國之手間山本云。
赤猪在此山。故和禮【此二字以音】共追下者。
汝待取。若不待取者。必將殺汝云而。以
火燒似猪大石而轉落。爾追下取時。即
於其石所燒著而死。爾其御祖命哭患
而。參上于天。請神産巣日之命時。乃遣
{討虫}貝比賣與蛤貝比賣。令作活。爾{討虫}貝
比賣岐佐宜【此三字以音】集而。蛤貝比賣持
水而。塗母乳汁者。成麗壯夫【訓壯夫云袁等古】
而出遊行。於是八十神見。且欺率入山
而。切伏大樹。茹矢。打立其木。令入其中<